頼朝公像 制作の軌跡
THE YORITOMO STATUE PRODUCTION TRAJECTORY
頼朝公像 制作の軌跡
先の弥勒菩薩像の制作にあたり、江里康慧仏師は「杉材は彫刻に不向き」とおっしゃいました。しかし智満寺に安置されている弥勒菩薩像を見れば、頼朝杉のきめ細かな木目が美しく、また、背後の光背と共に坐像にも施された截金細工がその木目を一層際立てています。推定樹齢800年の頼朝杉が放つこの優美さは、坂東武士として半生を終えたとはいえ、貴公子然とした頼朝公の面影を表現するにはうってつけの素材。そしてその頼朝公像を彫像していただくとすれば江里仏師をもって他にはないと考え「現代に甦る源頼朝公」の制作をお願いすることになりました。
全国各地さまざまな頼朝公イメージを探索
江里仏師に頼朝杉を用いた「現代に甦る源頼朝公」の彫像を正式にお願いするにあたって、どのようなお姿=容姿の頼朝公を制作していただくのかが課題となりました。私たちが想うイメージを具体的に江里仏師にお伝えするため、全国にある主な「頼朝像」を探索・検証しました。 上段左より/甲斐善光寺「源頼朝公像」山梨県(晩年50歳代)/神護寺「伝源頼朝像」京都府(壮年30歳代)/平櫛田中作「頼朝公像」岡山県(壮年30歳代後半)下段左より/源氏山公園「源頼朝公像」鎌倉市(壮年30歳代半ば)/東京国立博物館「伝源頼朝坐像」東京都(壮年40歳代後半)/補陀洛寺「伝頼朝自刻像」鎌倉市(壮年42歳)
動き出した頼朝公像制作プロジェクト 鑿入れ式
「令和4(2022)年1月13日、京都・平安神宮の東にある江里仏師の工房、平安仏所で待望の鑿入れ式が行われました。主催の銘木総研株式会社、前井宏之をはじめ、遠方からも本プロジェクトに賛同、ご協力いただいている方々が参加。各々のお祝いのご挨拶をはさんで、「やまとかたり」の大小田さくら子さんの厳かな朗誦が工房に響き渡り、列席者の鑿入れが順次行われました。この日から頼朝公像の制作が本格的に始まります。「天下治平」の大願を成就した「最盛期の頼朝公」をイメージしたという江里仏師。その側に同席された朋子さんは、頼朝公がお入りになる厨子の内側と扉裏に「伊豆の国の風景」を截金細工で描かれました。
凛としつつ穏やかな頼朝公の表情がさらにリアルに
江里康慧仏師の工房「平安佛所」にて制作中の源頼朝公像(2022年7月ごろ)。お像は、征夷大将軍となり天下を統一した頃の「等身大」の源頼朝公を象(かたち)どったもの。頼朝公が天下統一を成し遂げるまでの厳しい人生を、達観しつつ見つめ直すような穏やかな表情。衣冠束帯の装束の布の重なりや装飾などもリアルに彫り出されていました。重量は約55キロ。全部で6つのパーツに分かれており、中は空洞になっています。このあとの工程では、木目が隠れない程度に淡い彩色が施され、さらにリアルな源頼朝公が具現化されていきます。
鎌倉殿 頼朝公像 完成
鑿入れより9カ月。平安佛所・江里仏師の手によって完成した「源頼朝公像」。征夷大将軍となり鎌倉幕府を開いた武士の棟梁の威厳と品格をまとい、静かに着座しています。静岡県島田市の智満寺で信仰の対象として長きに渡り敬われ、その寿命を終えて倒木した「頼朝杉」が、800年の時を超え今再び江里仏師の手で命が吹き込まれました。鎌倉殿・源頼朝の生涯とともに頼朝杉の物語も、未来永劫世に伝えられていきます。
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