メニュー

頼朝公像 大解剖

THE YORITOMO STATUE VOLUMINOUS ANATOMY

頼朝公像 等身大サイズ

頼朝公像 クローズアップ

頼朝公像 全貌

「源頼朝公像」 大解剖

頼朝杉による源頼朝公像の彫像を手がけた京都・平安佛所の江里仏師は、お像の「等身大」のリアルさと、うちに秘めた「神性」の表現にこだわられました。坐像ですが、間近で拝見すると杉の美しい木目も相俟って、生々しいほどの迫力と説得力があり、さらに大きく感じられます。完成したそのお姿は360度、どちらから拝見しても隙のない凛とした緊張感とともに、その表情や眼差しは穏やかに私たちに語りかけるようです。

令和に甦る頼朝公像の装束と時代考証

推定樹齢800年の頼朝杉で彫像された、令和の頼朝公像のお姿は「征夷大将軍の頼朝像」。神護寺の伝頼朝公像同様、位の高さを表し、頼朝公が公の場で纏ったであろう、強(こわ)装束です。彩色にあたり、京都の老舗装束店の当主で装束司の黒田幸也氏により「有職故実(ゆうそくこじつ)」に則った考証・検証がなされ、黒い袍(ほう=格式の高い上着)には、茂ったつる草を模った輪無唐草(わなしからくさ)という文様が描かれています。また指貫(さしぬき=裾をくくった袴)は、藤色の地に八藤丸(やつふじのまる)の文様が刺繍風に描かれ、木彫とは思えない布の質感が伝わってきます。

頼朝公像 御装束解説

(京都での初お披露目では、鎌倉時代を背景とした御装束を実際にモデルにお召しいただき、御装束について解説いただきました)

頼朝公像の装束を監修するにあたり、2つのことを念頭に置きました。まずは、昔の決まり事やならわしである「有職故実(ゆうそくこじつ)」にのっとり、「当時のまま」ということを念頭に置くこと。もう1つは、江里先生がリスペクトされている現存する過去の木像のコンセプトを取り入れることです。

今回の頼朝公像の装束は、「布袴(ほうこ)」という名称の装束です。当初は、最初「張り」が印象的な「指貫袴(さしぬきばかま)」があり、上衣として「狩衣(かりぎぬ)」と頭上に「烏帽子(えぼし)」という姿を想定しておられましたが、公式な場での出で立ちを意識し、ご相談の上、上衣はより位の高い黒色の「袍(ほう)」という装束に変えて頂いております。伴いかぶり物も「烏帽子」から「冠(かんむり)」に変わっております。また、この像は人々の崇敬の対象になる事から、人をあやめる刀はふさわしくないという想いから「大刀」と「大刀」をはく「平緒(ひらお)」という名前のひもは表現を控えられております。

鎌倉時代の特徴である前面の深い「冠」、後ろが高い衿首の高さ、また「とんぼ」と言われる首のうち合わせ方が細部まで忠実に彫られております。

当然、装束の布質と木材からなる木像とでは、風合いも質感も違います。例えばこの袴です。袴の裾をつぼめる着方や、更には下袴をはくとしても印象は違います。ここは木像ならではの特色がよく表れている所です。

彫りの後には彩色をされるわけですが、こちらも文様の種類、文様の向き、布地の縫い目に至るまで、杉の木目を生かしつつ描かれています。

冠に描かれた文様は四菱文、

上衣である袍の独特な輪無唐草文(こちらは神護寺様の伝源頼朝肖像画を参考になさったとの事です)、この文様だけでお召しの方の身分が推測されます。正に頼朝公にふさわしい彩色です。

袴には紫地に白色で八藤(やつふじ)の丸文といった有識文様が描かれています。

装束の着付作業によれば、後に垂れている部分は「下襲」の「裾」と申します。折り込んで、大理石が表現されております。この部分は黒皮製のベルトに掛けますが、ここでは過去の木像に習い、このように束ねる形に落ち着いております。

後姿でないと見慣れない有識文様もあります。「裾」には、白地に白色で「臥蝶の丸」文が表現されております。

格調高い装束に身を包む事も相まって、頼朝公像からは威厳を保った崇高なイメージが感じとれます。この機会に、頼朝公像と共に装束文化にも理解が深まる事を願っております。

(解説: ㈱黒田装束店 装束司 黒田幸也さま)

黒田装束店による装束解説