- TOP
- 名木伝承データベース
- 名木データ
- たんだの椿
謂れ(いわれ)
香芝の民話のツバキです。
昔、平野村の西のはずれは、たくさんの家がたちならんでいたので「平野千軒」と呼ばれていました。その中に、ひときわ大きなお屋敷があり、毎年その門から見えるツバキが落とした花が真っ赤に地面を染め上げる姿はあまりに見事だったので、よく村人たちが見物に来ていました。
その屋敷には、村長さんと一人の娘が住んでいました。しかし、娘の姿は誰も見たことがありません。皆、「美しい娘だから虫がつかないようにしている」「逆に、あまりにへちゃだから隠している」など言い合いましたが、真実はわかりませんでした。
ある年も、ツバキが満開になりました。あまりに見事だったので、ツバキを見にやってくる人も増え、さらには枝を折っていく者まで現れる始末でした。すると、どこからともなく、屋敷の娘が病にかかったという噂が立ち始めました。そして、噂の娘さんと同じように、お屋敷にあったツバキの木もみるみる弱っていきます。気味悪がった村長さんは、下男にいいつけてツバキの根元を切ってしまいました。
その後、その娘がどうなったのかはわかりません。しかし、一人二人…と村人がいなくなり、「平野千軒」はすっかりさびれていってしまいました。それから年月が経ち、切り倒されたツバキにひこばえがでてきました。人々は「粗末にしてはならない」と、木の根元に小さなほこらを建て、花やお線香を供えるようになりました。
現在あるのは何代目かのツバキで、枝を折ったものは激しい腹痛におそわれると言い伝えられています。
アクセス
JR西日本和歌山線「志都美駅」より徒歩20分。