2024.05.23

木のコト

木を知る〜木々(もくもく)ディクショナリー【スギ】

銘木総研 編集部
銘木総研 編集部

スギ/杉/椙
門:球果植物門 Pinophyta
綱:マツ綱 Pinopsida
目:マツ目 Pinales
科:ヒノキ科 Cupressaceae
属:スギ属 Cryptomeria
種:スギ C.japonica D.Don
Japanese Cedar

日本の固有種スギ。日本で一番植林面積が広く最も長寿で、樹高も高くなる木

青森県及び秋田県の県境から屋久島まで、日本全国に広く分布するヒノキ科スギ属の常緑針葉樹であるスギは、実は日本の固有種で、その学名「クリプトメリア・ヤポニカ」も「隠れた日本の財産」という意味である。古来より、ヒノキと共に重要な建築材とされ、日本の樹木の中では最も広い面積に植林されています。

スギの植林は万葉集の時代以前に始まり、建築材として有用視されたのは、その成長の早さや材の軽さ、加工のしやすさ、まっすぐに通る木目の美しさなどによるが、戦後大量に植栽されたものが放置され、残念ながら一般的なイメージでは、花粉症をもたらす木として嫌われる傾向にあります。

天然林として名が知られるのは秋田県米代川流域、富山県立山、高知県魚梁瀬、屋久島など。秋田杉は木曽のヒノキ、青森のヒバ(ヒノキアスナロ)と並ぶ日本三大美林と称される。 スギは日本で最も長寿な樹種であり、屋久島の縄文杉は樹齢数千年。また、スギは日本で最も高くなる木であり、2017年時点で日本一背が高い木とされる京都の「花脊の三本杉」は、3本中の2本が樹高60mを超えます。

日本で一番背が高い木は京都市・花背の三本杉のうちの一本。樹高62.3メートル

林野庁が2017年11月28日に発表したところによると、樹高日本一の木は、京都市大悲山国有林にある「花脊(はなせ)の三本杉」のうちの1本で、樹木としては日本一の高さとなる六十二・三メートルを記録。最長樹齢も杉で、ご存じ屋久島の「縄文杉」は樹齢約2700〜7200年と言われています。杉は大きいものでは高さ50m以上、樹齢2000〜3000年にもなる「スゴイ木」なのです。

さらに、日本に生えている木の中でいちばん数が多いのも杉で、2017年度の調査では日本の人工林の44%がスギ、25%がヒノキ、10%がカラマツ、その他21%となっています。スギという植物は花粉化石分析から約200万年前ごろから日本列島に生育しており、縄文時代から日本人には一番身近な樹木だったといえます。また、実は杉は地球上で日本にしか生育しない、世界に誇れる「日本の固有種」です。

常緑針葉樹スギは、日本列島の気候風土に適し、水を好んで成長が早く、真っ直ぐで材質が柔らかく使いやすい。明るい木の色合いや木目も美しく、日本人に愛されてきました。最初は天然杉を和船や建築物の材料として利用し、さらに様々な生活道具にも使用。杉皮も家の外囲いに使ったりと、捨てる部位なく活用していました。

太さ長さが揃った杉の垂木を効率よく作るため、1本の杉から真っ直ぐで太さの揃った杉を何本も同時に生やす「台杉」という日本特有の技術があります。「台杉仕立て」は、室町時代に同じサイズの垂木が多数必要となる数寄屋造が流行ると、京都の北山地域で考案されて、磨き丸太や垂木丸太として利用されました。その方法は、まず植え付けから5〜6年目に裾の方の枝「取り木」を幹の周囲に残し、途中から打ち落す。二回目以降は、とり木の中から直立して成長の良いもの2〜3本を用途に合った寸法まで育て、順次伐採する。これを100〜200年に渡り繰り返す。株杉が元気な樹齢300年ぐらいまでは、育成できるようです。

ところで、杉の学名はクリプトメリア・ヤポニカ。クリプトメリアはラテン語で「隠れた財産」、ヤポニカは「日本」という意味。「杉」はまさに日本の財産だったというわけです。それが戦後、高度成長期に、安価で大量生産可能、かつ軽量で丈夫な強化プラスチックが現れると、杉は和船に使われなくなり、住宅建設にはあらかじめ都合の良いサイズに製材した安価な外材が輸入され、山の斜面から切り出して運ばなくてはならない国産の杉は残念ながら段々と使われなくなってきました。それを解決できそうな技術が「ケボニー化」。植物原料から生成した特殊なアルコールを木材に含浸、熱を加えて重合させる。すると細胞壁内の空洞にフラン樹脂が詰まって細胞が密になり、杉の質感は残しつつ、木材の硬さや腐朽に対する耐性が飛躍的に上がり用途が拡がる、というものです。

日本の山林に貯まっている杉材をどんどんケボニー化し、コストが抑えられれば、まさに杉山が宝の山になる可能性を秘めています。そのケボニー化でアップサイクルした杉材を輸出することが出来て、林業が活性化し、日本の産業構造にプラスになればいいですね。

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銘木総研 編集部
銘木総研 編集部

地域の人々によって大切に守られ語り継がれてきた「名木と伝承」にフォーカス。伝承とともに人々の生き方に寄り添ってきた名木が持つ史実やいわれを調査研究し、伝統文化・歴史の継承、名木の利活用につながるご提案とその実践を行っています。

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