2023.12.22

木とヒト

【庭師】株式会社 玉井造園/玉井智子さん

銘木総研 編集部
銘木総研 編集部

京都では、女性庭師が増加中!自然を愛でる伝統文化の担い手

今回のしごとびとは「庭師」さん。
京都で造園会社を経営し、所属する京都府造園協同組合では『女性雇用推進委員会』の委員長を務める玉井智子さんにお話を伺いました。

家業を継いでキャリアチェンジ。難しくもやり甲斐のある仕事「庭師」

銘木総研:「庭師さん」といっても個人で親方をなさっている方や、造園会社で造園技能士などの資格を活かして勤めている方など、様々な形でお仕事をされていますが、庭師は資格がないと出来ないというわけではないですよね。

玉井さん:はい、そうですね。庭師に必ずしも資格が必要というわけではありません。

銘木総研:玉井さんは、玉井造園を継がれたということでしょうか?

玉井さん:生まれたのが造園業の家で、父が一代で起こした会社だったんですが、私自身は結婚して全然別の仕事をしていました。ところが父が体調を悪くして入院し、会社を継げるのが妹か私か、姉妹どちらかの状況で、会社には多くの職人さんもいましたし、私がまずは入院している父との連絡係という形で会社というか実家に戻ってきたんです。

当時私は40歳だったので、京都造園高等職業訓練校に入らせて頂き勉強し、経験を積んで造園技能士2級を取りました。

銘木総研:その時は、造園会社を継ぐことへのプレッシャーなどお感じになりましたか?

玉井さん:いやあそうでもなくて、小学校ぐらいから住み込みの職人さんたちと毎日食事や、お風呂も職人さんたちの後に入っていたぐらい身近に接してましたし、その頃はまだ造園業のお代も銀行振込でなく集金に行くのが主流で、私も母と一緒にお客さんのところへ集金に行ってました。さらに私が学生時代には実家バイトとして職人さんたちの食事のお世話をしたり、そんな環境で育ちましたね。
もし私が造園業のキャリアを聞かれたら、『私は造園業の娘を50年やってますけど、それが何か』と答えるかもしれませんねえ(笑)。

銘木総研:実家の造園業をお継ぎになる前は、全然違うお仕事をされていたとのことですが。

玉井さん:大学を出てから不動産会社に入社して、輸入住宅や家具、キッチンのショールーム部門にいました。そこでの社内恋愛で結婚もしたんですが、離婚してから実家の造園業を継いだ形ですね。

銘木総研:では、お得意さまもお父さまから受け継いだということでしょうか。

玉井さん:そうです。ありがたいことに父の代からお庭づくりはもちろん、お庭の維持管理などを依頼してくださるご贔屓のお客様が何件もいらっしゃって、営業に出向くこともなくお仕事をさせて頂いています。
ハウスメーカーさんからのご依頼もありますよ。最近では、高齢化などでお留守になったお宅のお庭を預かって管理するお仕事もさせて頂いてるんですが、そういう事例が増えてますね。

銘木総研:京都府では、庭師さんは減ってきているのでしょうか。

玉井さん:ひとり親方の庭師さんなど、高齢化などで廃業される方も多いので、やはり減ってますねえ。そういう親方さんがお庭の手入れをしていたお宅から相談され、お仕事を引き継ぐこともあります。庭師の人材を確保する上でも、女性に庭師という仕事にもっと目を向けて欲しいと、京都府造園協同組合でも「女性雇用推進プロジェクト」を始めました。コロナ禍の最中にスタートしたばかりですが。

庭師のなり手、女性に期待!繊細かつ大胆な感性を生かせる仕事

銘木総研:京都府造園協同組合さんが把握なさっている女性庭師さんは、現在何人ぐらいいらっしゃるのでしょうか。

玉井さん:委員会発足直後の令和3年9月時点のアンケートでは、組合事業所での女性職人の雇用人数は、アンケート回答56社の内、15社27名でした。また、女性職人を雇用する意思のある事業所は、56社中30社。組合事業としてこれから手掛ける旧富岡鉄斎邸のお庭の改修にも女性庭師が参加する予定です。
庭師というと女性が入りづらいイメージがありますが、あたたかい目で女性の庭師を育てようと受け入れ体制も変わりつつあり、女性の繊細かつ大胆な感性を活かせる仕事かなと思います。

女性庭師からひとこと。

吉野瑞穂さん (よしのみずほ・庭師歴23年)/樋口造園 株式会社
京都造形芸術大学ランドスケープデザイン学科(通信コース)の第一期生として学び、海外でガーデニングの仕事をするはずが、京都で文化財保護としての庭師の仕事に興味を持ち、地下足袋姿もカッコいいなと(笑)今の造園会社に就職しました。
当時、私が会社の女性庭師第一号でしたね。初仕事でいきなり国宝・銀閣寺の石組護岸をやりました。今は二条城の広大な庭園の年間管理を任され、4年目です。自然相手に屋外で働けて奥深い面白い仕事だし、施主とコミュニケーションを取りやすい女性には、恐れずどんどん庭師を目指して欲しいですね。

銘木総研:最後に、玉井さんご自身が尊敬なさっている庭師さんはどなたですか。

玉井さん:私たち組合の顧問もされている造園界の巨匠、井上剛宏さんですねえ。代表作として京都迎賓館、伏見稲荷大社、梅小路公園の朱雀の庭などが思い当たります。

銘木総研:庭を見ているというより、縮尺された自然の風景を見ているようで圧巻ですね。玉井さんもこんなお庭づくりを目指されているわけですね。

玉井さん:いやいや。井上先生の作品を拝見するたび鳥肌が立って「どうやったらこんな庭が造れるんやろう」とため息を吐くばかりです。

銘木総研:これからもさらなるご活躍、素晴らしいお庭づくりを期待しています。ありがとうございました。

玉井智子 (たまい ともこ)さん

造園業を営む家に生まれる。
大学卒業後、不動産会社に就職。
輸入住宅やキッチン、インテリア販売のショールームに勤務。
40歳で実家の造園業を受け継ぎ、数々の庭づくりを手がける。
【主な技能等】
・造園技能士2級
・1級造園施工管理技士
・1級土木施工管理技士

株式会社 玉井造園

【住所】〒612-8124 京都市伏見区向島吹田河原町22番地
【Email】h-tamai@aurora.ocn.ne.jp
【業務内容】和洋庭園設計・施工・管埋、外構造園工事設計・施工・管理
【URL】https://www.tamaizoen.com/

京都府造園協同組合

明治20年「京都園芸業組合御認可願」を京都府知事に提出し、8月8日にその認可を受けたのが当組合の第一歩です。
【所在地】〒615-0904 京都市右京区梅津堤上IBJ16番地
【組合員数】234事業所(令和5年6月1日現在)
【代表者名】理事長 小島裕史
【電話番号】075-872-6286
【FAX番号】075-872-3244
【URL】http://www.kyoto-zouen.or.jp/

本記事は、
~日本の名木と伝承を明日に紡ぐ~
銘木総研の広報誌「木魂ッ子」vol.
21
にも掲載されています!

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銘木総研 編集部
銘木総研 編集部

地域の人々によって大切に守られ語り継がれてきた「名木と伝承」にフォーカス。伝承とともに人々の生き方に寄り添ってきた名木が持つ史実やいわれを調査研究し、伝統文化・歴史の継承、名木の利活用につながるご提案とその実践を行っています。

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