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2024.01.23

特集

まちの名木を活かす~大阪府守口市 推定樹齢500年「難宗寺の大イチョウ」

銘木総研 編集部
銘木総研 編集部
難宗寺のイチョウと守口市・瀬野市長
色づく時期にはイチョウの葉が黄色い絨毯のよう
(撮影12月初旬)

木とひとが共生するまち・大阪府守口市

大阪府守口市にある推定樹齢500年のイチョウ。
市民の日常に溶け込むその姿は『木と人の共生』をあらわしています。

今回は、守口市の瀬野市長、そしてイチョウがある難宗寺の芳滝住職に「木と人、まちづくりとの関係」をお聞きしました。

目次

守口市は大阪府のほぼ中央。自然・歴史・文化が息づく、都市と自然の調和したまち

大阪府のほぼ中央に位置する守口市。2021(令和3)年、市制施行75周年を迎え、コンパクトで平坦な市域、大阪市中心部まで約15分の利便性、北部には淀川、南部には緑地公園があり、都市と自然が調和したまちです。

2017(平成29)年4月1日から、全国自治体で初となる0~5歳の幼児教育・保育の無償化を実施。子育て世代が安心して暮らせる取組みを行っています。「魅力ある公園のあるまち」「歴史を感じられるまち」と呼ばれ、市内には185か所も公園があり、子どもから高齢者まで、憩いの場として利用しています。

また、豊臣秀吉が毛利輝元らに命じて整備した街道の面影を残す堤防道「文禄堤」や、菅原道真公の自刻像を御神体として祀り創建された「佐太天神宮」など、歴史文化を体感できる場所も多数あります。

淀川を望む守口市の風景

守口市民に親しまれる名木「難宗寺の大イチョウ」とは

そんな守口市には2つの府指定天然記念物があり、そのひとつが難宗寺にあるイチョウです。樹高25メートル、直径1.5メートル、推定樹齢500年の大イチョウを、秋には鮮やかな黄色の葉が彩ります。その葉が散れば、水に浮かび、屋根に散り、地面を埋め尽くす。それはまるで一幅の絵画のような姿で、毎年多くの人を楽しませています。

難宗寺は住宅街にあるので、特別な観光地というよりは、地域に開かれ、日常の一部として人々の生活に溶け込んでいます。イチョウの葉で遊ぶ子どもたち、木に抱き着きパワーをもらったと語る人、趣味の写真や絵画でイチョウをモチーフとした作品を創作して楽しむサークルの皆さんなど、そのひとつひとつの風景には、「木」と「ひと」が共に生きている姿があります。

市民に愛され親しまれる「難宗寺の大イチョウ」

【瀬野守口市長/難宗寺芳滝住職 特別対談】
名木から考えるまちづくり~市民にとってイチョウの木とは?

市民にとってイチョウの木は「どのような存在なのか、木は人の生活にどう関わっているのか」
木と人との関係や、名木をはじめとする地域資源を活かしたまちづくりについて、守口市の瀬野市長と難宗寺の芳滝住職にご対談いただきました。

守口市のシンボル「難宗寺の大イチョウ」

住職 市長は難宗寺のイチョウを初めてご覧になった時、どのような感想を持ちましたか?

市長 お寺につながる京街道をよく通るので、大きなイチョウがあるな、とは認識していたんですが、実際に近くで見るとその迫力に圧倒されました。あとは「地域に開かれている場所」という印象ですね。お寺にも気軽に入れますし、イチョウにも囲いがないので手で触れてパワーをいただけます。

住職 このイチョウは推定樹齢500年、樹高25メートル、直径1.5メートルで、枝張が約15メートルもあり、来迎寺開山の実尊上人、もしくは蓮如上人がお手植えされたという伝承のある名木なんです。
2018年の台風で木の上部に被害を受け小さくなったんですが、昔は下から上を見ると空が見えないぐらい大きかったんですよ。

市長 え、昔はもっと大きかったんですか。すごい迫力でしょうね。よく台風で倒木しなかったものですね。

住職 実はこのイチョウ、根っこが少し離れた国道まで伸びているんです。私が先代に道路にあるボコボコは何?と聞いたら、あれはうちのイチョウの根っこだと聞かされてとても驚きましたよ。

市長 お寺から国道まで150メートルはありますよ!それはすごい。それだけの力強さを持つイチョウからは大きなパワーをもらえそうですね。住職にとってこの木はどのような存在ですか。

住職 このイチョウは私が生まれた時からそばにあり、もう当たり前の存在、「家族」のような存在ですね。身長が一人だけとびぬけてますけど(笑)。

市長 縦も横もとびぬけてますね(笑)。

毎年恒例のお楽しみ。地元の子供たちの遊び場。

推定樹齢500年。市民と共にある特別なイチョウの木

住職 もうすぐイチョウの葉も色づき見頃となります。今年も多くの方が訪れ、楽しまれると思います。

市長 タイミングが良ければ、まさに黄色い絨毯が目の前に広がり、ひときわ黄色が際立ちますよね。これだけ美しいイチョウの風景を他に見たことがないし、ここで撮る写真は本当に映えるので、ぜひ若い世代の方々にも見に来てほしいですね。やはり普段からイチョウを目当てに訪れる人は多いのですか?

住職 はい。やはり、黄色い落ち葉が地面を覆い尽くす時期には、幼稚園や保育園の園児がお散歩に来たり、世代を問わず写真を撮ったり、絵を描いたり、イチョウの絨毯に寝転がってみたり、両手を広げて木のサイズを測ったりして楽しんでおられますよ。皆さんがそれぞれの楽しみ方でイチョウと触れ合っている風景を見ると、私たちにとっては当たり前の存在でも、皆さんにとっては特別な存在なんだな、としみじみ感じますね。

これからの守口市のまちづくりを熱く語る瀬野市長

市長 特別な存在でありながら、地域に開かれた場所ということもあり身近な存在で、市民と共にある木、という印象ですね。私はこれまで御神木や屋久杉などの有名な木しか意識することがなかったのですが、難宗寺のイチョウのように地域のシンボルとなる木にも、特別な力や役割があるように感じます。

住職 そうですね。推定樹齢500年という名木は、この地の歴史の生き証人、時代をつなぐ存在ですし、他には真似ができない守口市独自の魅力だと思います。

明治天皇に豊臣秀吉。天然記念物のツツジ…「守口市に行けば本物に触れることができる」

住職 名木を含め、守口市にある文化財や自然をまちづくりにどう活かしていくか、お聞かせいただけますか。

市長 難宗寺は明治天皇が大阪行幸の際に宿泊された歴史的な場所ですし、豊臣秀吉が伏見城と大阪城を陸路の最短距離で結ぶために整備した文禄堤も、守口市にのみ面影を偲ぶことができる文化財ですね。また、もうひとつの天然記念物である妙楽寺のツツジも、春には鮮やかな赤い花を咲かせ、周囲を華やかに彩ります。私はそれらの魅力を表現し、うまく広報して、「守口市に行けば、本物に触れることができる」と多くの人に伝えていきたいです。

府指定天然記念物、妙楽寺のツツジ。

そして、守口市民の方々にはその魅力を再発見・再認識していただき、より地元に愛着や誇りを感じてくださればと思います。また、市民の方々がその魅力を発信することをキッカケに、市外・府外の皆さまにも守口市を知り、訪れ、本物に触れていただけるような活用方法を考えています。

住職 ここにしかない魅力をいかに発見し、表現して伝えられるかが大切ということですね。私はもっと守口市に緑が増えればいいなと思っているので、市長のまちづくりに加えていただけると嬉しいですし、そんな未来を楽しみにしています。

名木を生かしたまちづくりの対談を振り返って

住職 いやぁ、今日は普段なかなか意識しない木というテーマで話してきましたが、木の役割や魅力はもちろん、それに関連するまちづくりのことまで新しい学びが多い時間になりました。私も家族のようなイチョウの木を特別な存在として見直す良い機会になりました。

市長 私もこの対談のお話をいただいた時、木についての対談?と不思議に思いました(笑)。けれど、難宗寺のイチョウの木が市民にとって特別な存在であり、日常に彩りを与えてくれる魅力的な存在であることに気づかされました。

イチョウの魅力を語る芳滝住職

木だけでなく、守口市にある地域資源をどう活かし、より良いまちづくりにつなげていくかを多面的に考えるキッカケになったことを嬉しく思います。もう寒くなってきましたし、そろそろ葉も色づいてあの鮮やかな黄色い絨毯が今年も見られますね。楽しみにしています。

住職 夏も緑の葉が綺麗で秋とは違う美しさが楽しめますよ。四季折々の景色を見に来てください。いつでもお待ちしています。 (11月下旬取材)

守口市のシンボルキャラクター 「もり吉」と。

【大阪府守口市】

大阪平野のほぼ中央部に位置し古くは農地が大部分を占め集落が点在していましたが、
大阪市に隣接する西部地域から市街地が発展し、特に高度成長期には一挙に市街地が拡がりました。

また、早くから大手家電メーカーの企業城下町として発展を遂げるとともに安定した税収を肯景に各種行政サービスを充実させ、
公共施設や都市基盤の整備を進めてきた結果、現在では日常生活を支える基本的な詭設整備は一定の到達点に達し、
成熟した都市としての機能を備えるに至っています。

交通機関は、大阪市中心部まで約15分の京阪電車、大阪メトロや大阪空港まで約35分の大阪モノレールが縦横に走り、
主要道路は、国道1号・阪神高速道路・近畿自勤車道などが整傭され、各都市を結ぶ交通の要衝となっています。

【ことりっぷ・守口めぐり】

守口市の魅力を伝える観光ガイド「ことりっぷ・守口めぐり」では、歴史、おすすめスポット、
ランチやカフェなどのお店をご紹介。

「守口市ホームページ~観光ガイドブック『ことりっぷ 守口めぐり』電子版を公開しました!」
『ことりっぷ・守口めぐり』電子版

本記事は、
~日本の名木と伝承を明日に紡ぐ~
銘木総研の広報誌「木魂ッ子」vol.
21
にも掲載されています!

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この記事を書いた人

銘木総研 編集部
銘木総研 編集部

地域の人々によって大切に守られ語り継がれてきた「名木と伝承」にフォーカス。伝承とともに人々の生き方に寄り添ってきた名木が持つ史実やいわれを調査研究し、伝統文化・歴史の継承、名木の利活用につながるご提案とその実践を行っています。

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