2023.12.14
③【レポート後編】泉穴師神社に伝わる祭礼「飯之山神事」とだんじり祭り
【泉穴師神社・穴師の森プロジェクト】
鎮座から1350年、歴史ある泉穴師神社の境内にあったひときわ大きな御神木が、台風によって根こそぎ倒木しました。この御神木の姿と「穴師の森をさらに後世まで残していきたい」という第四十七代宮司の想いをうけて「穴師の森プロジェクト」が立ち上がりました。
倒木した樹齢600年の御神木と鎮守の森のストーリーを未来へ紡ぐ
実際に行ってみた!だんじり祭りレポート(後編)
②【レポート前編】泉穴師神社に伝わる祭礼「飯之山神事」とだんじり祭り からつづく
「飯之山だんじり」のあとは、地域のだんじりを見に行くことに。すると、さっそく「池浦町のだんじり」を発見。泉穴師神の鳥居をくぐっていきました。近くで見るとすごい迫力!
そんな「池浦町のだんじり」について、色々お話をお聞きすることができました。
インタビューを受けてくださったのは、池浦町の自治会本部役員で世話人会の阪上さんたちお2人です。
Q.「池浦町のだんじり」には何が彫ってありますか。オススメを教えてください。
A.皆さんそれぞれ好きなところはありますが、僕の場合は、大屋根枡合の神話の大蛇(おろち)退治です。あとは、土路幕正面の義経の八艘飛び。これもいいですね。この八艘飛びをしている義経を、人には見えないカラス天狗が支えているという彫り物なんですが、これはどこにもない池浦町の特徴です。
Q.お祭りの見どころを教えてください。
A.なんといっても、宮入ですね。普通は祈祷してもらうとすぐ終わってしまいますが、穴師地区は町のだんじりが集合した後、ご祈祷の前にお百度参りのように境内を前後に行ったり来たりします。これは、泉穴師神社の境内が広いからできることなんです。また砂利びきのところを動かすので、相当な力が必要です。穴師地区独特の見せ場ですよ。
Q.だんじりの素晴しいところはどんなところですか?
A.町全体が一丸となって目的を果たす。1つの目標に向かって努力するというところですね。だんじり祭りは事前に打ち合わせして、みんなが納得してだんじりを曳くんですよ。夜のお祭りは3歳の子も曳くことができますから、本当に生まれたときから死ぬまでできるお祭りなんです。
お忙しい中、本当にありがとうございました。お祭りについてお話されている姿が本当に楽しそうで、皆さんにとっても、なくてはならない存在なのだと改めてわかりました。
4つの町と飯之山だんじりが揃う「宮入り」
さて、宮入をみようと泉穴師神社境内に戻ってきました。そのタイミングで空からポツポツと雨が…。皆さんカッパを被って待機しています。我々もカメラが水に濡れないようにしながら、待つことにしました。
そして時間は12:30。
宮入の時間です。先に境内で待っていましたが、だんだん人がやってきてカメラを準備し始めます。宮入の順番は、豊中町、池浦町、我孫子町、板原町の順番です。遠くから太鼓と笛の音が聞こえてきました。いよいよです…!
ついに、「豊中町のだんじり」が泉穴師神社に入ってきました!
だんじりの上で飛び跳ねる大工方。太鼓や笛の音に合わせて舞う姿がかっこいい…!
続いて「池浦町のだんじり」です。みなさん素晴らしい笑顔!各町のだんじりが宮入をすると、このように巨大なクラッカーを鳴らしてお祝いしていました。
続いて「我孫子町のだんじり」。熱気がすごい!
宮入りしてきた各町のだんじりは、泉穴師神社の境内を行ったり来たりします。境内の奥に行くときは引っ張り、境内の外側へ向かうときは押します。池浦町でお伺いしたお話の通り、相当な力が必要なようで、子どもたちも力一杯だんじりを動かしていました。
最後に「板原町のだんじり」。皆さん、元気いっぱい。素晴らしいラストを飾ってくれました。
だんじりの上からは記念品を撒くようです。中にはシュークリームが入っていた町もあったそう。皆さん一生懸命、手を伸ばしてゲットしていました。
さて、これで4つの町のだんじりが揃いました。「飯之山だんじり」は、真ん中の方にある青い屋根の小ぶりのだんじりです。この頃には境内には人がいっぱい。身動きが全然とれない状態でした。たとえ雨の日でも、地域の皆さんが見に来るほど熱気のあるお祭り。町全体が1つとなって、目いっぱい楽しむ。それが、飯之山神事とだんじり祭りの醍醐味なんですね!
そんな中、ここで悲しいお知らせが。雨のため、「渡御(とぎょ)」がなくなったという情報が入ったのです。 「渡御」とは、宮入後に行うもので、神社にお鎮まりになっている神様が神輿に遷って、氏子地域を巡幸していくことです。この祭りで活力を取り戻した人々を神様が見て喜び、渡御した地域の各家々に御神徳を与えると信じられています。
飯之山神事では、各地域のだんじりが先頭をはしり、続いて飯之山だんじり、天狗、社名旗…と順に並んで進んでいき、下記の写真のような行列になります。
飯之山神事のはじまりは「雨が降って飢餓を救った」というお話なので、飯之山だんじりが雨雲を呼んできたのかもしれませんね。残念でしたが、来年を楽しみにすることにします。
だんじりの見せ場「やりまわし」!
そして、最後に見に行ったやりまわし。場所は、豊中町郵便局の交差点前。穴師連合のセレモニーが行われました。時間の都合上、「豊中町のだんじり」のやりまわししか見れませんでしたが、とにかくすごい迫力でした!
太鼓と笛の音が聞こえてきたと思ったら、すごいスピードでやってきます。そして!クルッ!と向きを変えると、こちらへやってきました!お見事!思わず拍手です!
セレモニー後、地域の皆さんがだんじりの後ろを追いかけていたので、我々もついていくことに。
そこで、豊中町だんじりの豊中町自治会長の辻󠄀川豊彦さんとお会いできました。ギターがご趣味で「ブラジリアンローズウッド」について教えてくださいました。この木材は楽器によく使われ、とても硬い種類なのだそうです。ちなみに、愛用のギターは、表面はスプルース、裏面はインディアンローズウッド、指板はエボニーとのこと。素晴らしいギターとともに、後日、記念撮影させていただきました。博識で、とても優しい素敵な方でした。
このあと、町の皆さんは夜までだんじりを曳き、22時ごろにお祭りが終わります。また、「飯之山だんじり」は御簾の中の飯之山をはいで甘酒にして、翌日町内に配るのだそうです。取材していた我々も、思わず大はしゃぎしてしまうような楽しい1日でした。
もっと知りたい!彫り物にみる飯之山神事の豆知識
なんとなんと、「豊中町だんじり」には「飯之山神事」に関する彫刻があるのだそうです!
米炊きの場面。「飯之山だんじり」に乗せる餅米を焚きあげているところです。
物相盛りの場面。炊きあがり軽くついた餅米を物相に盛り付ける作業。
「飯之山だんじり」に飾る注連縄(しめなわ)を編んでいる場面。
餅米を杵でつく作業をしています。
泉穴師神社鎮座の宮元なので「豊中町のだんじり」には、「飯之山神事」の作業の様子や神社の太鼓橋、そして、武運長久を願って楠木正成が参詣したことなど、随所に彫刻を施してあるのだそうです。
取材を終えて…印象的だったのは、皆さんの笑顔
今回の取材で印象的だったのは、皆さんがはじけるような笑顔で楽しんでおられたこと。こうやって、「飯之山神事」や「だんじり祭り」は、長年にわたって人々を笑顔にしてきたんだろうなぁと感じました。
だからこそ「飯之山だんじりには、泉穴師神社の境内」が、「豊中町のだんじりには、飯之山神事」が、それぞれ彫刻で随所に施され、泉穴師神社と穴師地区のお祭りの素晴しさを伝えていることがわかりました。参加しても、観ていても、とっても楽しい。そんな素敵なお祭りに出会えて、本当に良かったです!
皆さんもぜひ、穴師地区の「飯之山神事」と「だんじり祭り」を体感してみてください。
【泉穴師神社・穴師の森プロジェクト】
~倒木した樹齢600年の御神木と、鎮守の森のストーリーを未来へ紡ぐ~
泉穴師神社へのアクセス
【電車・徒歩の場合】
南海本線泉大津駅下車、東へ約1.5km、JR和泉府中駅下車、西へ約1km
【車の場合】
国道26号線、阪和豊中交差点を(堺方面から来た場合)右折、2つ目の信号を左折
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