2023.11.02
【栃拭漆稜線盛器】木漆伝統工芸/ 甲斐幸太郎
和を基調としながらも独特の世界観を醸し出す
【栃拭漆稜線盛器(とちふきうるしりょうせんもりき)】
1枚の栃の無垢板から手彫りで割(く)り出したアーティスティックでなだらかなフォルムと繊細な襞模様、
丹念に重ねた拭き漆により際立つ幽遠な木目が唯一無二の美しさを醸し出す。
令和2年度「第67回 日本伝統工芸展」出品作品。
本体:トチ製
本体サイズ:奥行27.1cmx幅58.6cmX高さ4.3cm
価格(税別):800,000円
注目の木漆伝統工芸職人 甲斐幸太郎氏の作品
今回取り上げる「栃拭漆稜線盛器(とちふきうるしりょうせんもりき)」の作者は、現在大阪で創作活動中の木漆(もくしつ)伝統工芸職人、甲斐幸太郎さん。これまで各地の日本伝統工芸展に作品を出品し、文部科学大臣賞など数々の賞を受賞している大注目の工芸作家さんです。
甲斐さんは1976年、愛知県名古屋市生まれ。「子供の頃から地球儀が好きでくるくる回して遊んだりしていました。自然とか遺跡に興味があったので、大学では地理学を学んでいました。しかし、ちょうど就職氷河期にあたってしまい、進路に悩んでいたとき、図書館で、世界的な日系家具デザイナー『ジョージ・ナカジマ』氏の作品と出会いました。日本の伝統的な木組を使って家具を創作している点が僕の心に響いたのです。」
そんな経緯から、当初は木を組んだ家具に関心があったそうですが、「京都伝統工芸専門校(当時※1)木工芸専攻に通っていた頃、京都市生まれの漆芸家・木工家、黒田辰秋氏(※2)の作品を見ました。木を剖(く)り抜いて自然の木目を生かし、木の生命感を表現したその唯一無二の表現法が素晴らしいなと感じ、影響を受けましたね。」
(※1)現在の「京都伝統工芸大学校」
(※2)黒田辰秋(くろだたつあき)
1904~1982年。漆芸家、木工家。京都市祇園生まれ。
刳物、指物などの木工と乾漆、螺細などの漆芸で幅広く知られる。
ノミの目を残した手彫りの風合いと拭漆
専門学校卒業後は、黒田辰秋氏の弟子にあたり大阪で活動している、木漆工芸作家・藤嵜(ふじさき)一正氏に師事。以来、大阪を拠点に創作活動を続けている。
「自分のイメージを忠実に再現するため、1点1点、手彫りで木の造形から、拭き漆、仕上げまで全部ひとりで手がけていて、シンプルな中にも木の良さが感じられるよう工夫しています。毎日、ネタ帳のような感覚でデッサンをし、デザインの引出しが増えていく中で過去のイメージを組み合わせたりもします。曲線が好きなので、植物を観察して、その造形美にインスピレーションが湧くこともあります。」
「独立当初は普段使いの食器などから作りはじめましたが、伝統工芸展に作品を出品するうち、各方面から注目して頂けるようになり、今ではアート性の高いオブジェなども自由に創作しています。」
木漆伝統工芸 / 甲斐幸太郎
【住所】〒532-002 大阪府大阪市淀川区東三国1-11-1
【TEL】090-4297-9749
【mail】koutarou.kai@gmail.com
【URL】http://kaikotaro.unit-ty.com
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