2023.08.25
【和胡奏者】頼朝杉の和胡を世界で奏でる シンガーソングライター 里地帰さん

「和胡」 という楽器をご存知ですか。
見た目はアジアの伝統楽器「二胡」 に似ていますが、その音色は柔らかで深く、心の琴線に触れる調べを奏でます。シンガーソングライターであり、唯一無二の和胡奏者、里地帰さん。和胡誕生の秘話や台湾でのブレイクなど、興味深いお話をお聞きしました。
目次
「里地帰」という名の由来
よく、さときちやカトキチなんて間違えられることがありますが、ふる「里」の「地」へ「帰るという想いを名に刻んでいます。初めて音楽で自分を表現したいと思い、行動したのが二十歳の時でした。
趣味で弾いていたギターを抱えて、原付バイクで東京から京都まで弾き語りの旅へ。
野宿など大変なこともありましたが、出逢う人は親切な方が多く「また帰っておいで」と優しい言葉をかけていただきました。
初めて行く場所が帰る場所になる。自分の音楽もそんな存在でありたいと願っています。
「和胡」誕生秘話
北京の路地で初めて耳にした二胡の音色に惹かれ、ギターから二胡奏者へ活動を続けるうちに「もっと自分らしい音色を追求したい」という想いが高まり、楽器作りがスタートしました。
そんな折、幸運にも樹齢800年という頼朝杉に巡り会えたのです。
それもかの源頼朝が挙兵時に、天下統一という大願成就を祈念して手植えしたという伝承があると聞いて、すぐに尊敬する楽器製作者の西野和宏さんに相談しました。皮に和紙を使うなどの工夫も重ね、できあがった日本製の楽器は、二胡の持つ直線的な鋭さではなく、空間に広がり調和する柔らかい音色。すぐに頼朝のイメージが湧き上がりメロディーにしました。
それが和胡での第一作「時、紡ぐ音」です。 独特な音色です。ぜひ聴いてみてください。

日本より台湾でブレイク
友人を訪ねて初めて台湾に行った日。その友人と約束していた日程や場所を間違えていたことに到着後気づき、なんとか辿り着いた台南の民宿の女性主人が、偶然にも名の知られたピアニストでした。
たどたどしい会話でも、そのときの音楽の縁がきっかけとなって台湾での演奏が次々と増え、日本での活動より多く、現地のメディアなどに取り上げていただきました。
今は、台湾の学生を日本に案内したり、主宰している二胡教室の生徒たちと台湾へ演奏旅行に行ったり、 国際文化交流も積極的に行っています。二胡と和胡との弾き比べや、頼朝杉のことも紹介しています。
演奏以外の活躍も
和胡の可能性を広げるため、欅や竹の楽器作りにもチャレンジしています。多くの方に、ものづくりの楽しさを体験してほしいと、親子で楽しめる和胡作りのワークショップも行っています。ご自身で作った楽器を手に取ることで、木の温もりや音の響きを感じ、より身近な存在になります。
それも国産材を使うことで、日本の森林のことも興味を持ってもらえる。このあたりは、銘木総研さんが目指す方向に近いのではないかと感じます。
これからの夢
コロナ禍になってコンサート活動は積極的にできなくなりましたが、オンラインコンサートなど、新しいチャレンジができました。音楽は、それがなくなった瞬間生きていけなくなるというものではないのですが、心穏やかに生活するためには必要なものだと思っています。縁があり、自分の音楽に触れていただいた方が、また明日もがんばろうという気持ちになってくれたらうれしいです。
この時期に生まれた新たな工夫やアイデアをいかし、和胡という楽器と自分の音楽を、さらに世界に向けて発信していきます。頼朝のように「大願成就」を祈念して。

里地帰(さとちき)
1982年生まれ。東京都出身。 東京農業大学卒。現在は在住地、福岡を拠点に、台湾などアジアで活動。 栄養士の免許を持ち、 趣味は料理とDIY。
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