2023.08.25

木とヒト

【木珠(念珠)】(株)カワサキ・川﨑孝雄さん

銘木総研 編集部
銘木総研 編集部
川﨑孝雄さん

近江八幡で千四百年の伝統技術「木珠挽きの技を未来へ伝える」

 仏事に欠かせない木製の仏具のひとつが「念珠」。1400年前、聖徳太子が伝えた日本の念珠生産の礎が、滋賀県近江八幡だとご存じだろうか。その地で三代に渡り、その精神と技術を継承する株式会社カワサキの川﨑さんに念珠づくりの仕事についてお話を伺いました。

近江八幡の地域資源「木製数珠玉づくり」

 川﨑さんの家系は、「ライト兄弟より先に屋根から翼で翔んだ」と語った初代から、代々エンジニア気質であり、発明家で、二代目の時代にはすでに、木珠の製造工程を自社開発の機械により、いち早く機械化・自動化していたそうだ。

 株式会社カワサキの木珠製造の工程は、厳選した国産材、輸入材、また、黒柿(注①)、屋久杉、神代欅、斑紋鳳凰樹(注②)など希少な木材を用い、その貴重な銘木の魅力と美しさを最大限に引き出すため、製材から乾燥、サイズや木質、用途により独自の機械、または手挽きにより「珠」に加工(小径のものなど機械挽きの方が仕上がりが綺麗になるそうだ)、研磨、手の込んだ組紐による房づけと、創業以来培ってきた技術の粋を集め、数珠は仏教の宗派によっても仕立てがかなり違うが、「手にされた方が日々心豊かにお過ごしになられますように」との想いのもと、全ての工程にこだわり抜き、自社で行っているという。

 オリジナル高級数珠ブランド「半兵衛」とは、創業家川﨑の先祖が江戸時代より名乗っていた名で、”半”は道のり半ばを意味し、「絶えずおごることなく精進し続けるように」との想いが込められている。

(注①)柿の木が数百年の歳月を重ねると、希に水墨画のような不思議な模様が表れる。 
(注②)オリジナルの呼び名で、繊細で美しい斑紋がまるで鳳凰の羽根のように見えることから斑紋鳳凰樹と名付けた。非常に木目の乱れ入り組んだ木のこぶ=アンボイヤバールは、どの方向から刃物をあてても、必ず逆目が立ち、割れ・カケが生じてしまい非常に加工が困難だが、熟練の木地師の技により珠に挽き、磨き上げられる。

磨かれて美しい緑の艶を放つ珠はリグナムバイタ(生命樹)。
原産地は中南米で、人類が発見した木の中で、比重1.5と最も重くて堅い木といわれる。
本来は黄褐色だが、カットされて空気や紫外線に触れるとこのような緑に変色する。

【念珠制作の工程】
製材(大割り)
原木から柾目取りした角材に製材
⬇︎
製材(板切り)
 既定の珠サイズに合わせて板を切る
⬇︎
乾燥(板干し)
加工性を高める為、板を充分に乾燥
⬇︎
珠挽き(機械挽き)
 素材ごとに適切な刃物で加工します
⬇︎
珠挽き(手挽き)
 職人により丁寧に一珠ずつ加工 
⬇︎
珠 研磨
珠を磨き仕上げます
⬇︎
磨き上げた珠
木地なりの上質な仕上がり
⬇︎
検品
人の目により検品します
⬇︎
念珠に仕立てる
房をつけ、それぞれの形の念珠が完成

想いが込もる木から特別な念珠を作る

 定期的に出展している全国の有名百貨店などの催事で、丁寧な手仕事の実演をすれば、その奥深い「価値」に気付いてくださるお客様も多いという。
 また、滋賀県の小中学生の「おしごと体験」で木珠製造工房を見学した、一見ヤンチャだった子供が、「人の役に立つ仕事をする」というその時の感動をきっかけに教師となり、大人になったその子と再会することもあったそうだ。
 川﨑さんは「そんな人との出会いに、より一層、丁寧に仕事と向き合うことの大切さを実感しています。」と話す。

株式会社カワサキ 川﨑孝雄さん

株式会社カワサキは滋賀県・近江八幡にて昭和3年創業。
川﨑孝雄氏は平成7年、3代目社長に就任。
平成21年オリジナルブランド高級木製数珠「半兵衛」発売開始。
さらに平成22年オリジナルブランド「レアウッドビーズBijoux(美樹=ビジュ)販売開始。
平成26年9月には、(公社)国土緑化推進機構「森の名手・名人」に認定された。

株式会社カワサキ

【本社】 〒523-0894 滋賀県近江八幡市中村町690
【TEL】0748-33-5101
【FAX】0748-33-5103
【第二工場】 〒523-0893 滋賀県近江八幡市桜宮町206-3
【店舗/Bijoux (美樹-ビジュ-)】
〒523-0837 滋賀県近江八幡市大杉町12 八幡堀石畳の小路
【URL】http://kawasaki-beads.com/

本記事は、
~日本の名木と伝承を明日に紡ぐ~
銘木総研の広報誌「木魂ッ子」vol.1
7
にも掲載されています!

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銘木総研 編集部
銘木総研 編集部

地域の人々によって大切に守られ語り継がれてきた「名木と伝承」にフォーカス。伝承とともに人々の生き方に寄り添ってきた名木が持つ史実やいわれを調査研究し、伝統文化・歴史の継承、名木の利活用につながるご提案とその実践を行っています。

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